「今、CAEの外注委託先を考えはじめた」「今後CAEを設計に取り入れていこうと考えている」という方には「価格」「納期」「ソフト選定」を考える上で参考になると思います。
「CAE受託ドットコム」は、CAE歴20年の管理人が自身の経験を元にCAEの有効な活用方法を発信するブログです。
下記に関連する内容でお困りごとがあればお問い合わせフォームに質問事項をご連絡頂ければ、時間があるときに回答させて頂きます。リクエストなどにも対応していきたいと思います。
CAEの外注委託する際の価格はどうやって決まっている?
プラント設備の配管振動解析を想定した価格構成を下記に示します。CAEの外注委託価格の大半は人件費です。
費用の大部分を占める解析費と報告書作成費は、作業工数×単価で決まります。
参考までに国土交通省令和4年の設計業務委託等技術者単価は、一日(8hr)で\42,195です。それに利益、研究開発費、技術調査費などを考慮すると、\42,195×2~3の単価でも不思議では無いですね。
次に、下記に各項目についての解説します。
解析費
解析費は、モデル作成、解析作業、結果出力を行うための費用です。基本的には人件費のみです。
簡単な事例で作業の流れについて解説します。
モデル作成は、2Dの図面データあるいは3DのCADデータ(IGES,STP)などの形状データからメッシュ分割する作業です。材質に応じた材料物性値などの設定もここで行います。
求めるアウトプットに合わせてメッシュ分割の大きさは考える必要があります。これについてはプロに
おまかせしましょう。できるだけ費用を抑えたい方は、3D CADを準備するとコストを抑えられます。
解析作業は、境界条件(固定、フリー、ピン支持)、荷重条件(集中荷重、分布荷重)などの条件を設定し、解析ソフトで計算を実行する作業です。また、計算を実行して結果が得られたらその結果が妥当な結果かどうかを判断します。作業は難しくないですが、妥当性の判断が技術者としての力量を問われるところになります。
結果の妥当性の判断が必要になった場合は、下記リンク先でその方法について解説しています。
設計者必見!設計にも活用できるCAE構造解析技術者の検証方法
設計者必見!設計にも活用できるCAE振動解析技術者の検証方法
結果出力は、妥当性が確認できた結果の変位、応力を出力する作業です。
CAEで解析をする目的によって、試験結果と比較したい場合の応力、設計で評価したい応力の種類が異なる場合があるので、CAEの解析を依頼する際は目的を最初にお伝えしておくことをおすすめします。
解析費は基本的には人が作業するので、作業時間に対する人件費がほとんどです。
解析ソフト使用料
解析ソフト使用するための料金です。解析ソフトは自社で購入している場合は年間保守料、レンタルしている場合は年間レンタル費用がかかります。解析ソフトを購入していても解析ソフトは毎年最新バージョンがリリースされ、新機能が追加されるためソフトを所有しているだけで多額の費用がかかります。
また、見積金額に解析ソフト使用料が記載されていない場合もありますが、それは別の項目に含まれていると考えて下さい。どこかで必要経費は回収する必要がありますからね。例えば、人件費の単価に含まれている場合など。
Nastran、Abaqusなどの汎用ソフトの費用は数百万円~です。数百万円の解析ソフトが、数万円~数十万円で使え、プロが解析してくれるということは自社でソフトを保有したりレンタルするより、CAEを外注委託するコスト的なメリットは大きいです。
報告書作成費
報告書作成費は、CAEで解析した結果をワード、パワーポイントなどの資料にまとめる費用です。
費用は外注先によると思います。考察までしっかりを書いてくれる会社は費用が高くなりますが、結果のみを記載する会社は費用は安いです。
これについては、ケースバイケースで対応してくれる外注先選定が良いかなと個人的には思います。
というのも、早くOK、NGの判断だけが欲しい場合もあれば、今回得られた結果を次の設計に活かせるように技術を残りたり、エンドユーザーに納得してもらうための説得力のある報告書では要求される報告書のレベルが違うからです。
コストを優先するのか、外注業者の技術力の力を借りたいのか、エンドユーザーを納得させられる報告書の品質が必要なのか、適切な外注業者をご検討下さい。
見積段階で外注先に目的をはっきりと伝えることができれば、スムーズに仕事は進んでいくと思います。
販売管理費
販売管理費は技術以外の担当営業、事務処理などの人件費です。見積金額の10~20%くらいが一般的なところでしょうか。
技術のこともよく理解している凄腕の担当営業であればお客さんがお得になる技術提案をしてくれます。販売管理費を少しでも安くしたい場合は、HPからの集客に力を入れている会社さん選定が有効だと思います。
販売管理費は当然安いほうが良いですが、これについてもケースバイケースだと思います。
CAEで解析する内容が完璧に決まっていて解析作業だけ外注先に委託したい場合は、凄腕の営業さんは不要ですが、難しい課題で悩んでいる場合には凄腕の営業さんはきっとあなたにとってベストな提案をしてくれ、結果的に最もお得な結果をもたらしてくれると思います。
どれくらいの期間かかる?短納期でやってくれるところはある?
短納期交渉をする場合は、見積金額から逆算して交渉する。
下記の見積で、仮に\50,000/日の単価としてた場合、最短で20日前後です。
交代勤務でもやっていない限りはこれ以上の交渉は無意味ですが、これ以上の短納期を実現する方法が無いわけではありません。
それはインドへの外注委託を活用している会社を選定することです。スピード感だけで言うと日本の会社では太刀打ちできません。あちらは交代勤務で休み無くやってくれるのでそれは早いです。ただ、日本の発注側が作業指示を細部までする必要がある場合、仕様作成に時間が取られそこまで工程短縮効果が出ない場合があります。
CAEを外注委託する際のメリット、デメリット
細かいことを言えば、外注委託先で異なりますが一般的なところで考えていきます。
あなたの会社のやり方が絶対正しいと思っていたことも世間一般的な目線で見るとそうでないこともあります。これは一つの会社にいると意外と気付かないところです。複数の業界を経験している私の実体験です。
「世の中の人がどういう評価方法をしているのか」
「世の中にもっと便利な方法は無いのか」
「もっと楽に仕事を回せないのか」
これらについて考える上でもCAEの外注委託先を検討する価値はあると思います。基本的にCAEの外注委託先は複数の業界の会社さんとお仕事をしているので視野が広い技術者の方が比較的多いと思います。
また、上長やエンドユーザーへの説明に困る場合にはCAEの外注委託先に説明を依頼する、最新のCAE技術を活用して設計への作業工数を減らすことなども相談に乗ってくれると思います。
ソフト多すぎて分からない、結局どのソフトが良いの?
解析ソフトは汎用ソフト、特定の解析に特化したソフト、CADに付随したソフトがあります。ここでは、汎用ソフトについて解説します。汎用ソフトは少し金額は高いですが、自由度が高く色んなことに対応できるため最もおすすめです。今回は紹介しませんが、CADに付随したソフトはコストパフォーマンスに優れ、部品単位での検討に適しています。
おすすめソフトは、筆者が20年間数社を渡り歩いて色んな解析ソフトを使ってみた上で個人的な主観で判断したものになります。
まとめ
あなたがCAE外注委託をする際の初心者が知っておくべき4つのポイントをまとめました。あなたがCAEの外注委託を活用し、効率よく商品価値を高めることにお役に立てれば幸いです。
上記に関連する内容でお困りごとがあればお問い合わせフォームに質問事項をご連絡頂ければ、時間があるときに回答させて頂きます。リクエストなどにも対応していきたいと思います。